Squeeze Momentum Indicator(以下、SMI)は、価格の「収縮(スクイーズ)」から「拡張(エクスパンション)」へ移る瞬間を視覚化できる人気インジケーターです。特に、FX初心者にとって、「いつ入るか」「どこで切るか」の判断軸を明確にしやすいのが強みです。
この記事では、SMIの仕組みと設定、200EMAを使ったエントリールール、損切りの客観化、3年間のバックテスト結果と改善プロセスまでを一気通貫で解説します。読み終えるころには、裁量の迷いを最小化し、同じ条件で誰がやっても同じ結論に近づける再現性の高い手順が手元に残ります。
【この記事でわかること】
- Squeeze Momentum Indicatorの仕組み(ドットとバーの意味)
- 初心者向けの推奨設定とTradingViewでの表示方法
- 200EMA×SMI×Pivotで構成する具体ルール(RR 1:2)
- バックテスト結果(期間・勝率・PF)と“勝てない原因”の潰し方
- 実運用での資金管理・チェックリスト・よくある失敗回避
Squeeze Momentum Indicatorとは?仕組みと強みを初心者向けに解説
SMIは、相場の「レンジ(収縮)」から「トレンド(拡張)」へ移行する変化点を捉えるために、ゼロライン上のドットとヒストグラム(緑・赤のバー)で構成されています。

ドットはボリンジャーバンドとケルトナーチャネルの位置関係から「スクイーズ状態」を判定し、バーはモメンタム(勢い)を色と明るさで可視化します。
初心者にとっての最大の利点は、条件が目で見て判定できること。黒ドット(収縮)→グレードット(拡張開始)という切り替わりに、バーの色(緑=上昇圧力、赤=下降圧力)が重なると、トレンド初動を狙う根拠が揃います。
例えば、下記の画像はゼロラインの黒ドットがグレードットに変化し、緑のバーが重なっているので、上昇トレンドの初動と判断できます。

ゼロラインのドット:スクイーズとエクスパンション
SMIのドットは、ボリンジャーバンドがケルトナーチャネル内に収まると「黒(スクイーズ)」に、外に広がると「グレー(エクスパンション)」に変化します。

黒が続いた後にグレーへ切り替わる瞬間は、溜め込んだエネルギーが放出されやすい局面です。

ヒストグラム:色と明るさで勢いを読む
バーがゼロより上で緑なら上昇圧力、

下で赤なら下降圧力。

さらに明るい色=加速、濃い色=減速を示します。

例えば、下降トレンド中に一瞬「明るい緑→濃い緑」となれば、戻り売りのタイミングを視覚的に把握できます。
よくある誤解
SMI単体は「方向」も「勢い」も示しますが、トレンドの強さと継続性までは担保しません。そこで後述の200EMAの傾きや損切りの客観化を組み合わせ、裁量のブレを抑えます。
Squeeze Momentum Indicatorの推奨設定
初心者がまず押さえるべきは「基準」となる設定値です。再現性のある検証と実運用を両立するため、以下の初期設定から始めることを推奨します。
【推奨の初期設定(まずはここから)】

- ボリンジャーバンド:期間20、偏差2.0
- ケルトナーチャネル:期間20、偏差1.5
- エントリー基準の黒ドット数:6つ以上続いた後にグレー化
- トレンドフィルター:200EMA(価格位置と傾き両方を見る)
この組み合わせは、待つ→動くの切り替わりを十分に引きつけてから参入する思想です。無駄打ちが減り、初心者でもルール遵守がしやすくなります。
TradingViewでの見やすい表示
SMIはチャート下段、200EMAは上段に。

ローソク足はヒゲが見やすい配色にし、EMAが埋もれない太さに調整。SMIのバーは初期色で問題ありませんが、ゼロラインを強調しておくとドットの変化に気づきやすくなります。(今回、SMIの設定をカスタマイズしておらず、標準の設定・色です。)
時間足・通貨の選び方
検証例ではUSD/JPYの1時間足を使用。
初心者はまず時間足を固定(例:1時間足)し、通貨もスプレッドの狭いメジャー通貨から始めると、パラメータ変更による影響を把握しやすいです。
200EMA×Squeeze Momentum Indicator:具体エントリールール
ここからは、初心者でも迷わない明文化ルールです。裁量の余地を減らし、同じ入力なら同じ出力になるように組み立てます。
ロングの条件(買い)
- 黒ドットが6つ以上連続した後、グレーに変化
- SMIヒストグラムの色が緑
- 価格が200EMAの上
- 損切り:直近Pivot Low(後述)
- 利確:リスクリワード1:2(損切り幅の2倍)
ショートの条件(売り)
- 黒ドットが6つ以上連続した後、グレーに変化
- SMIヒストグラムの色が赤
- 価格が200EMAの下
- 損切り:直近Pivot High
- 利確:リスクリワード1:2
損切りの客観化:Pivot High / Pivot Lowを採用
「直近高値・安値」は人によって解釈が割れがちです。そこでPivot High / Lowを使い、前後5本のローソク足で最も高い/安い値が確定したポイントを採用します。さらに、Pivot確定後により極端な高安値が出た場合はそちらを優先。このルールでリペイントの不安と迷いを同時に解消します。
バックテストで検証:結果と“勝てない原因”の潰し方
再現性を前提に、以下の条件で検証しました。
- 期間:2022/03/01〜2025/02/28(約3年)
- 通貨:USD/JPY、時間足:1時間
- 資金:100万円、**損失は口座残高の2%**になるようロット自動調整
- ルール:前章のエントリー/損切り/利確
初期結果(改善前)の要点
- 最終残高:100万円 → 230万円(利益130万円)
- PF:1.57、勝率:45.53%、取引回数:123回
- 最大DD:約13%
RRが1:2なので、理論上は勝率33.3%以上で右肩上がりになります。実際、勝率45%台で十分に増えていますが、もっと押し上げられる余地が見つかりました。
改善の4ポイント
- 高ボラ足の無視:高値−安値がATR(20)の2倍以上の足はPivot計算から除外。極端なヒゲによる非現実的な利確幅を避けます。
- Pivot後のより極値を優先:Pivot確定後にさらに安い/高い値が出たら、損切りはそちらに。理不尽な即死を回避。
- 最小/最大損切り幅:6pips未満や200pips超は見送り。スプレッド即死と“永遠に届かないTP”を防止。
- トレンドフィルター:200EMAの傾きで方向判定。例)直近3本の傾きが日換算で0pips以上ならロング許可、0以下ならショート許可。逆行エントリーを削減。
再検証の成果(改善後)
- 最終残高:100万円 → 285万円(利益185万円)
- PF:2.00に上昇、勝率:**50.9%**へ改善
- 取引回数:20回減(質の悪いエントリーを間引き)
ルールを足す=機会損失ではなく、期待値の低いエントリーを削った結果として、PF・勝率・資産曲線のなめらかさがすべて向上しました。
実運用のコツ:資金管理・チューニング・失敗回避チェックリスト
バックテストで見えた注意点を、初心者でも実運用に落とし込める形に整理します。
資金管理の黄金律(初心者はここを最優先)
- 1回の損失は口座残高の2%以内に限定(ロット自動調整)
- 同方向のポジションは最大1本から開始(慣れたら増やす)
- 勝率よりRR(1:2)の遵守を優先。感情で利確を前倒ししない
負けやすいパターンを事前に遮断
- 黒ドットが6未満なのに「雰囲気」で先走る
- 200EMAの傾きが逆なのに、バー色だけで入る
- 最小損切り幅未満でスプレッド即死
- 高ボラ足をPivotに採用してしまい、TPが非現実的に遠い
初心者向けチューニングの例
- ケルトナ偏差1.5→2.0:スクイーズ判定が増え、チャンス増。ただしノイズも増えるためトレンドフィルター併用が前提。
- 黒ドット数 6→7–8:さらに待つことでダマシ減。その代わりエントリー回数は減少。
- Pivot本数 5→7–9:高安の“波”を大きく捉え、損切り位置が素直に。短期スキャルには不向き。
よくある質問(FAQ)— Squeeze Momentum Indicatorをもっと使いこなす
Q1. 時間足はどれが最適ですか?
A. 初心者は1時間足から。指標のノイズが減り、SMIの切り替わりが明確です。慣れたら15分や5分でスキャルに応用可能ですが、最小/最大損切り幅の再調整が必須です。
Q2. 通貨ペアは何が向いていますか?
A. まずはUSD/JPYなどスプレッドが狭く癖の少ないペア。ボラが高すぎるペアはSMIの色変化が忙しく、初心者は翻弄されがちです。
Q3. インジケーターだけで勝てますか?
A. SMIは初動の視覚化に優れますが、資金管理(2%ルール)とEMA傾きフィルターが揃って初めて期待値が安定します。セットで運用してください。
実装手順のテンプレ
- TradingViewにSqueeze Momentum Indicatorと200EMAを表示
- 黒ドット≥6 → グレー化を待つ
- バー色が緑(ロング)/赤(ショート)で200EMAの上下一致を確認
- Pivot High/Low(前後5本)で損切り価格を確定
- RR 1:2で利確価格を設定
- 最小6pips/最大200pipsの損切り幅をチェック(外れたら見送り)
- EMA傾きフィルターで方向最終確認
- 口座残高の2%損失になるようロット調整
- 取引後は勝敗よりルール遵守率を記録(勝ちは結果、遵守は原因)
まとめ:Squeeze Momentum Indicatorで「待ってから入る」を習慣化
Squeeze Momentum Indicatorは、収縮→拡張の変化点をドットとバーで明確化でき、初心者でも**“待てば分かる”ルール**を組みやすいのが魅力です。
本記事のポイントは次の3つでした。
- 200EMA×SMI×Pivot×RR1:2で再現性のある型を作る
- 高ボラ足の無視/損切り幅の上下限/EMA傾きで“勝てない原因”を事前に遮断
- 損失2%ルールと振り返りで期待値を長期的に積む
まずはデモでUSD/JPY・1時間足からスタートし、同じ条件で20〜30トレードを淡々と回してください。勝率やPFより先に、ルール遵守率を100%に近づける。これが、初心者が最短距離で勝ち筋を作る王道です。



